実家売却で空家特例3000万円控除を受けるためのガイド

親の実家を売却する際、「税金がどれくらいかかるのだろう」と心配になっていませんか?実は、条件を満たせば最大3000万円もの特別控除が受けられる可能性があります。しかし、わずかな条件の違いで適用が受けられなくなることも…。

当記事では、不動産コンサルタントとして10年以上、200件以上の実家じまいをサポートしてきた経験から、実家じまいを成功させるための具体的な手順と注意点をお伝えします。これから実家じまいを検討している方が、時間とコストを最小限に抑えながら、スムーズに進められるようにサポートします。

この記事のポイントは、
・空家売却の3000万円特別控除の事が分かる
・実家売却時に特例使えないパターン
・特別控除を利用するための注意ポイント
・実家売却で上手に控除を利用

この記事では、介護施設入所や一時的な引越し、マンションの場合など、よくある4つのケースについて、控除が受けられるパターンと受けられないパターンをお伝えします。これにより、あなたの実家売却時に思わぬ課税を避け、最大限の税制優遇を受けるようにしておきましょう。

3000万円特別控除とは?適用条件の基本を押さえよう

空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例(通称:空家3000万円特別控除)は、相続した空き家を売却した際に、最大3000万円まで譲渡所得から控除できる特例制度です。

この特別控除は譲渡所得税を大幅に軽減できる強力な節税措置ですが、適用を受けるには厳格な条件をクリアする必要があります。

参考:国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」

基本的な適用条件

  1. 相続によって取得した家屋であること:贈与などで取得した場合は対象外です
  2. 被相続人の居住用家屋であったこと:賃貸物件などは対象外です
  3. 相続開始から3年目の12月31日までに売却すること:期限を過ぎると適用不可です
  4. 売却価格が1億円以下であること:高額物件は対象外です
  5. 相続開始時から売却時まで事業や居住、貸付などの用途に供されていないこと:一定期間の貸し出しなどをすると対象外になります

「あるお客様の例では、すべての条件に当てはまると思っていたのに、わずか2ヶ月間のアパートとしての貸し出しがあったために、約800万円の節税機会を失ってしまいました。細かい条件まで把握しておくことが非常に重要です。」

適用を受けるメリット

この特例の最大のメリットは、譲渡所得から最大3000万円を控除できることです。例えば:

  • 取得費(購入価格など):1000万円
  • 売却価格:4000万円
  • 譲渡所得:3000万円(売却価格 – 取得費)

通常なら3000万円に対して約600万円(所得税+住民税)の税金がかかりますが、この特例を使えば税金がゼロになる可能性があります。

この特例は2023年12月31日まで(2024年1月1日以降は特例を延長して2028年12月31日まで)の時限措置ですが、延長される可能性もあります。しかし、確実に節税するには、現行制度内での適用を目指すべきでしょう。

実家売却パターン別!控除が使える?使えない?

実家の売却には様々なケースがあります。ここでは代表的な4つのパターンについて、3000万円特別控除が適用できるかどうかを解説します。

①親が介護施設に入所して空き家になっていた場合

結論:基本的に特別控除の適用対象となります

親が介護施設に入所する際に施設に住民票を移していた場合でも要介護・要支援等認定を受けていたことを証する書類があり、施設入所直前まで自宅として住んでいて、その後も賃貸や親以外が住んでいたことが無い場合、「被相続人の居住用家屋」として特別控除の対象となります。

適用条件のポイント:

  • 親が亡くなる直前まで住民票がその家屋にあったこと
  • 介護施設入所後も売却までの間、他の用途(貸付など)に使用していないこと
  • 相続後3年以内に売却手続きを完了すること

参考:国土交通省「空家発生を抑制するための特例措置」

②親が住んでいたのがマンションだった場合

結論:マンションでも特別控除の適用対象となります

一戸建てだけでなく、マンションも「居住用家屋」として特別控除の対象になります。区分所有建物(マンション)も一戸建てと同様の条件で適用を受けることができます。

マンション売却時の注意点:

  • 親の居住用として使われていたマンションであること
  • 投資用物件として購入し賃貸に出していた場合は対象外
  • マンションに付随する駐車場なども含めて控除対象になる場合がある

「70代の母親が住んでいた駅前の3LDKマンションを相続した娘さんのケースでは、マンションの売却価格3,500万円に対して、取得費が800万円だったため、約2,700万円の譲渡所得が発生しました。3000万円特別控除を適用することで、約540万円の税金が免除されました。」

マンション売却の場合も条件は一戸建てと変わりません。親の居住用として使われていた証明(住民票など)や、相続から売却までの間に別の用途に使用していないことの確認が重要です。

③親が介護施設入所前に子供の家に一時的に引越していた場合

結論:介護施設に入所する前の一時的に子供の家が住所になると特例適用は不可

親が介護施設に入所する前に子供の家に一時的に引っ越していた場合は、特例の要件が満たされなくなります。

親が一時的に家を離れた場合の注意:

  • 一時的とはいえ、子供と同居していた場合は控除対象外になる可能性が高い
  • 親以外に同居している人がいると控除対象外
  • 介護を受けつつ親が居住して生活する具体的な予定がうかがわせる事情や証拠等がない場合は、控除対象外の可能性が高い

「父親が子供の家に2年間住み、住民票も移していたケースでは、『被相続人の居住用家屋』とは認められず、特別控除が適用されませんでした。」

このようなケースで微妙な判断の場合には、証拠書類を集めて税理士に相談することをお勧めします。

空家特例の適用において介護施設に入所等した場合は、介護施設入所直前にその住宅に被相続人が住んでいたかどうかがポイントになります。

④親が介護施設入所後に家を第三者に賃貸していた場合

結論:特別控除の適用は不可

親が介護施設に入所した後、その家を他の人に賃貸していた場合は、残念ながら特別控除の適用を受けることはできません。

適用不可の理由:

  • 特例の条件に「相続開始から売却までの間、事業の用、貸付の用又は居住の用に供されていないこと」という項目があるため
  • たとえ短期間(数ヶ月)の賃貸でも、条件を満たさなくなる
  • 親族への無償貸与でも「居住の用に供した」と判断される可能性がある

「85歳の父親が特別養護老人ホームに入所した後、空き家対策として1年間近所の大学生に家を貸していました。父親の死後、相続した息子さんが家を売却しようとしたところ、この賃貸期間があったために3000万円特別控除が適用されず、約450万円の追加税金が発生してしまいました。」

空き家の管理や防犯対策のために賃貸を検討される方もいますが、将来的に3000万円特別控除の適用を検討している場合は、賃貸は避けるべきでしょう。

特別控除を確実に受けるための3つの事前確認ポイント

3000万円特別控除を確実に受けるためには、以下の3つのポイントを事前に確認しておくことが重要です。

1. 親の住民票と実際の居住実態を確認する

特別控除の適用には「被相続人の居住用家屋」という条件があります。この判断には主に住民票が基準となりますが、実際の居住実態も重要です。

確認ポイント:

  • 親の住民票が売却対象の家屋にあるか
  • 長期入院や施設入所の場合でも、住民票を移動していないか
  • 水道・電気・ガスなどの公共料金の支払い状況
  • 近隣住民の証言や定期的な帰宅の証拠

「実際の事例では、親が3年間入院していましたが、『一時的な入院で、回復したら戻る予定だった』という事情と、定期的に家の様子を見に帰っていた記録があったため、『居住用家屋』と認められたケースがありました。」

居住実態の証明ができるよう、公共料金の領収書や、定期的な帰宅を示す交通費の記録などを保管しておくと良いでしょう。

2. 相続後の家の使用状況を厳格に管理する

相続開始から売却までの間、その家をどのように使用・管理するかが極めて重要です。

管理のポイント:

  • 賃貸に出さない(短期間でも不可)
  • 事業用として使用しない
  • 相続人自身も居住しない
  • 空き家としての最低限の管理(掃除、換気など)は問題ない

「相続した空き家の管理方法で悩まれるケースが多いですが、定期的な掃除や換気、防犯のための見回りは問題ありません。ただし、家具を入れて生活の拠点にするようなことは避けるべきです。」

売却までの間、空き家の状態を記録しておくことも重要です。例えば、定期的に写真を撮っておくと、「居住や貸付の用に供していない」ことの証明に役立つ場合があります。

3. 売却までのタイムラインを明確にしておく

特別控除を受けるためには、相続開始から3年目の12月31日までに売却する必要があります。

タイムライン管理のポイント:

  • 相続開始日(被相続人の死亡日)を起点とする
  • 「売却」とは売買契約ではなく、引き渡しと代金決済が完了した日
  • 年末近くの売却は特に注意が必要

「相続開始から2年11ヶ月経過した時点で売買契約を結んだものの、決済が翌年になってしまい、期限を超過してしまったケースがありました。売却の見通しが立ったら、余裕をもったスケジュール設定が重要です。」

特に複数の相続人がいる場合は、意思決定に時間がかかることも考慮し、早めに売却の検討を始めることをお勧めします。

参照:国税庁「相続した空家を売却した場合の特例チェックシート」

まとめ:実家売却時の3000万円特別控除を活用するために

実家売却時の3000万円特別控除は、適切に条件を満たせば非常に大きな節税効果が期待できる特例制度です。この記事のポイントを振り返り、特別控除を確実に受けるための行動指針をまとめます。

4つのケースの適用可否:

  1. 親が介護施設に入所して空き家になっていた場合:基本的に適用可能
  2. 親が住んでいたのがマンションだった場合:一戸建てと同様に適用可能
  3. 親が施設入所前に子供の家に一時的に引越していた場合:基本的に適用不可
  4. 親が施設入所後に家を第三者に賃貸していた場合:適用不可

特別控除を確実に受けるための重要ポイント:

  1. 事前準備を徹底する:親の住民票や居住実態を確認し、相続後の家の使用状況を厳格に管理する
  2. 時間に余裕を持って行動する:相続開始から3年以内という期限を意識し、早めに売却の準備を始める
  3. 専門家に相談する:微妙な判断が必要なケースでは、税理士など専門家のアドバイスを受ける
  4. 必要書類を整える:申請に必要な書類を計画的に収集する

もし少しでも不安や疑問がある場合は、確定申告前に税理士に相談することをおすすめします。小さな手間や費用で、大きな節税効果を得られる可能性があります。
実家売却という大切な決断が、税制面でも最適な結果となりますように参考になれば幸いです。

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