実家じまいとは、実家を処分するという人生における大きなイベントの一つです。
住まなくなった実家をどうしたら良いか知りたくないですか?
実家が売れなくて困ってないですか?
実家が無くなるのは寂しくないですか?
実は、正しい手順とポイントを抑えておかなければ、大きな負担とリスクにつながります。
いざ実家じまいを始めようとしても何から手をつければ良いか分からなかったり、
なかなか手放すことが出来なく大きな負担とリスクを抱えることに。
私は不動産業界に20年近く携わっており、実家の売却に何度も立ち会ってまいりました。
不動産の知識と経験から実家じまいを考えている方にお役に立てる情報となっております。
この記事のポイントは、
・実家じまいの正しい方法がわかります。
・実家じまいする上での流れがつかめます。
・実家じまいでリスクを最小限に抑えることが出来ます。
・実家じまいするうえでマンションと戸建ての違いが分かります。
この記事を読むことで、いざ実家を売却する事になっても慌てずゆっくり準備に取り掛かれれ、事前に準備も出来るようになります。
実家じまいと家じまいとは? 実家じまいをする理由
実家じまいは、生まれ育った実家を売却や物納等で処分して無くしてしまうことです。
実家じまいは子供たちの視点で家を処分することを述べています。
それに対して、家じまいということばも最近聴きますが、自分たちが所有している家を処分することで親側の視点で述べています。
実家じまいや家じまいは、遺骨を取り出して墓石を撤去する墓じまいということばに対する造語です。
親が施設に入所するために実家を整理して手放す必要があったり、両親が亡くなり相続し誰も維持管理する人がいなくなり実家を売却しなければならなくなったり。
実家じまいは、親の生活環境の変化や経済的な理由から必要となることが多いです。
実家じまいが必要になる3つの理由
実家じまいをする理由は、大きく分けて住む人たち自身の問題と維持費や税金等の維持管理負担での問題と相続を考えての3つがあります。
1つめの住むひとたち自身の問題は誰も住まなくなった、もしくは住み替えが必要となった事が考えられます。
例えば、親が亡くなり相続になって実家を処分したり、親が高齢になって施設に入所する場合や子供と同じ世帯にしたり子供たちの近くに住み替えたりが考えられます。
2つめの維持管理負担での問題は、メンテナンス等費用や毎年の固定資産税の負担となり実家じまいを考えます。
例えば、誰も利用していなくても家を所有することで毎年固定資産税がかかります。マンションであれば修繕積立金や管理費が毎月かかってきます。
最後の3つめの相続を考えての問題は、親の視点から子供たちの争いや負担を減らすための実家売却です。
一つしかない実家を複数の相続人で分けるということは出来ません。
家の市場価値が高ければお金で揉めるし、家の市場価値が無かったとしても誰が維持管理するかでコスト負担で揉めることになる。
親の視点で考えると元気なうちに終活の一環として住み替えを考えたりします。
実家売却できない理由
いざ実家じまい(実家売却)をしようとしても、なかなか買手が見つからず長年経過してしまっているということがあります。
実家売却できない原因の大半が需要が少ないことがあげられます。
2025年に国民の4人に1人が後期高齢者となり日本は超高齢化社会を迎えます。
国立社会保障・人口問題研究所によると2030年には世帯総数はピークを迎えるとされております。実家売却するにも都市部のような需要が多いエリア以外では何らかの対策をしない限り簡単に家を売ることが難しくなってきます。
参照)国立社会保障・人口問題研究所
実家じまいの手順と事前準備
実家じまいが必要になるときは、親が高齢者施設に入る、亡くなるなどの理由で実家を処分する等の理由が様々です。
いざ実家じまいを進めようとしても家財の整理、家の売却、相続手続きなどやることがたくさんあります。
あらかじめ親族で今後について話し合って意見をまとめておく必要があります。
将来的に実家をどうしていくかは早めに話し合っておくことが重要です。
早めの事前準備が必要な3つの理由
将来的に実家をどうしていくか早めに話し合っておく必要がある理由は
①親が認知症になってしまったら簡単に実家処分できなくなる
②空き家にしていても維持費や税金負担がかかる
③相続発生の場合、10ヶ月以内の相続税の納税が必要。
相続税がかからない場合でも、誰が実家を引継ぐか相続人で揉める可能性がある等が考えられるために早めに話し合って方向性を決めて/おくことが大切です。
また、親の介護や生活環境の変化に伴い、実家を処分する必要が生じることもあります。
いざ実家じまいをやろうとしても親や兄弟と意見が合わなかったり、親が高齢になって施設等入る必要性から始めたとしても子供の年齢も50代や60代になっていることでしょう。
そうなると体力的にもきつく作業がなかなか進まず精神的にも負担が大きくなってきます。
なので実家じまいには時間がかかるということを見越して早めに対処していくことが大切です。
実家じまいの事前準備について
実家じまいは、親の終活や相続の一環として行われることが多く、家族全員が納得し、協力することが成功の鍵となります。
事前準備をしっかり行うことで、トラブルを避け、スムーズに進行することができます。
実家じまいの手順
実家じまいの手順は以下の通りです。
①家族で話し合い:親の意向を確認し、実家じまいの方針を決定します。話し合いのポイントとしては、実家をどうするか、誰が中心となって進めるか、どのタイミングで行うかなどを決めます。
②財産の把握:実家の財産状況を確認し、必要な手続きを整理します。プラスの財産だけでなくマイナスの財産も確認しておくことが大切です。
③荷物の整理:不要な物を処分し、必要な物を分別します。自力で行う場合は時間と体力がいることを覚悟して計画的に進める必要があります。業者に依頼することも検討しておきましょう。
④住み替え先の検討:親の新しい住まいを決定し、引っ越しの準備をします。親が健在の内に実家じまいを行う場合は、親の意向を尊重し利便性のよい住まいを選びましょう。
⑤実家の売却:不動産業者と相談し、実家の売却手続きを進めます。実家が売れる不動産であるかどうかもある程度把握しておくことが大切です。
問題ある場合や需要が無く売れない不動産の場合は、あらかじめ戦略を立てなければ売却するにも手放すにも出来ないこともあるためです。
実家じまいの費用と期間
実家じまいには、感情的にも物理的にも大きな負担がかかる作業となります。実家じまいをスムーズに進行させるためにも費用や期間を把握し適切な準備をして計画的に進めることです。
実家じまいには、遺品整理や不動産の売却、解体など多岐にわたる作業が含まれます。これらの作業には時間と費用がかかるため、事前に計画を立てることが必要です。
実家じまいの費用について
・不用品の処分:家の中の不用品を処分するためにも処分費用が発生します。一般ごみで処理するにも時間や負担がかかります。まとめて処理業者に依頼しても費用がかかりますし、特に大型家具や家電製品の処分は、一般ごみとしてもゴミ処理費用がかかります。
・不動産の売却手数料:家を売却する際には、不動産業者に仲介手数料を支払う必要があります。これは通常、売却価格の3%+6万円+消費税となります。
・解体費用:家を解体する場合、建物の構造等によって費用は違います。解体の必要がない場合でも、修繕やクリーニング費用が発生することがあります。
・税金等:印紙税、抵当権抹消費用、譲渡所得税など、さまざまな手続きに伴う費用も考慮する必要があります。
これらの費用を抑えるためには、複数の業者に見積もりを依頼し、費用を比較することが重要です。また、自分でできる部分は自分で行うことで、コストを削減することも可能です。
実家じまいの期間について
・遺品整理:家の中の物を整理し、必要なものと不要なものを分けます。この作業には数週間から数ヶ月かかることがあります。
・大掃除や修繕:家を売却する前に、掃除や必要な修繕を行います。これには数週間から1ヶ月程度かかることが一般的です。
・不動産の売却手続き:不動産業者と連携して、家の売却手続きを進めます。売却が完了するまでには、数ヶ月かかることが多いです。
・遺産や財産の分配:相続手続きや名義変更なども必要です。
これらの手続きには、数ヶ月から1年以上かかることがあります。これらの作業がスムーズに進む場合でも、数ヶ月はかかることが一般的です。また、家の状態や家財の量、相続手続きの複雑さによっては、1年以上かかることもあります。
実家じまいのポイント、マンションと戸建の違い
実家じまいをする際にマンションと戸建ては、それぞれ異なる特徴や注意点があります。
住まわれた実家が築年数が経過していると簡単には手放すことが出来ない問題も出てきます。
人気があるエリアであれば、実家じまい=売却の流れでスムーズに行くかもしれません。
しかしながら、人気が無いエリアであったり維持管理がされていないような家であれば膨大な修繕費がかかったり建替えすら出来ない場合もあります。
マンションの特徴と注意点
(マンションの特徴)
・管理費と修繕積立金が毎月かかる
・共有部分がある
・建物管理状況によって価値に差が出る
・専有部分はあくまでも部屋の中
・建物維持管理は管理組合や建物管理会社による
・リフォームは管理規約等により制限される場合も
(マンション売却時の注意点)
マンションは 共用部分(エントランス、廊下など)の管理は管理会社が行うため、個別で大規模なメンテナンスをする必要がないですがマンションを所有しているだけで管理費や修繕積立金がかかります。
築年数が経過すると毎月の管理費や修繕積立金が上昇し所有コストが上がったり、管理が不十分だと、マンション全体の評価が下がり、売却価格にも影響を与えます。
マンションの修繕積立金の積立方法は、長期計画された修繕工事費の累計額を計画期間中均等に積み立てる均等積立方式と新築時の積立額を抑えて新築購入時に負担を抑えて、段階的に修繕積立額を増やしていく段階増額積立方式の2種類があります。
築年数が経過していると積立額が高くなっていたり、修繕コストが当初計画よりも上昇していたりし負担が大きくなってきたりします。
そのため管理組合の状況や修繕計画を確認して管理状況等をする必要がでてきます。マンション自体の価値が下がったりする可能性もあるため売却のタイミングも重要となります。
参照)マンションの修繕積立金に関するガイドライン
戸建ての特徴と注意点
(戸建ての特徴)
・建物は自己管理
・土地が所有権か?借地権か?
・土地が借地権であれば、借地権自体の売却も可能。ただし地主の承諾が必要
・接道状況等により建て替えが難しいことも
・土地が所有の場合は、境界確定しなければ基本的に売却が難しい
・更地にして土地を切り分けも可能(ただし、切り分け方を見間違えると土地自体の価値を落してしまう)
・修繕や改築等が自由に決められる(建築基準法の範囲で)
(戸建て売却時の注意点)
マンションと違い毎月の管理費や修繕積立金の負担がないが、建物維持には自己管理が必要です。マンションとの大きな違いは、需要があるエリアに立地していても土地状況によって資産価値が大きく異なります。また、木造住宅である戸建ては、どんなに費用をかけて維持管理していても築年数が経過している場合は、市場流通される不動産価値としては、古家付きの土地としての扱いで、むしろ建物解体費分がマイナスにされてしまうケースが多い。
相続により更地にして土地を相続人ごとに切り分けることも可能だが、切り方を誤ると不動産の価値自体を大きく下げてしまう可能性もあります。
例えば、100㎡の土地を2人で相続し50㎡づつ分けたとします。
都市部のように狭小住宅の需要が高ければ50㎡の土地でも問題ないかもしれませんが、庭付き戸建てでしか売れない需要のエリアであれば50㎡に土地を切り分けてしまうと売れない価値がない土地となってしまうわけです。また、各自治体によって最低敷地面積と言って建物を建てるために最低必要な土地面積を設けている(建築基準法第53条の二の2項)こともあり、少し間違えって土地を切り分けてしまえば建物が建築できない土地になってしまうことも考えられ土地を見極めが大切です。
参照1)建築基準法53条の二の2項
参照2)荒川区の最低敷地面積60㎡以上
まとめ
実家じまいは、感情的にも体力的にも負担の大きい作業ですが、早めに準備し計画的に進めることで、スムーズに行うことができます。
親や家族と事前に話し合い、相続や処分に関する意向を確認し、誰が中心となって進めるかを決めておくことが大切です。
マンションと戸建ての特徴や費用、期間についても理解し、それに基づいて適切な判断を行いましょう。
特に相続に関しては、相続税や相続人間のトラブルを避けるために早めに手続きに取り組むことが必要です。
親の高齢化や生活環境の変化に伴い実家をどうするかは避けては通れない課題です。専門家に相談しながら早めの対策をしておくことで経済的な負担やリスクを減らすことが出来ます。